ハト場日記

Working, Reading, and Wondering

2021年に読んだ本を振り返る

2021年も残すところあと2日。今年もコロナのおかげで読書が捗った一年だったようで、読書メーターで2021年に読んだ本をまとめてみたら、今年は合計で60冊読んでいた。基本的に読む速度はそれほど速いほうでもないし、それに加えて、人文系の時間のかかる本や、鈍器本、古典など、どちらかというと重めの本がほとんどだったので、今年は読書生活という面では本当に充実した一年だったと思う。

海外文学

今年一番は『忘却についての一般論』だろう。これについてはブログにも書いているが、今だにふと思い出す。外を普通に歩いているときや、カフェでコーヒーを飲んでいるとき、特にぼーっとしているときによく思い出す。忘却というテーマの本なのだが、僕の記憶にはしっかりと残っているようだ。

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また今年は劉 慈欣『三体』の第三部が発売されて本屋を賑わせた。『三体』は第一部、第二部でも「もうこれで十分やろ」と思わせておいて、次でさらに驚かせてくれる。あの第二部の後にどうすんねんと妙に心配していたのだが、心配無用だった。クライマックスとなる第三部も、僕みたいな軟弱な想像力しか持ち合わせていない読者をずいぶんと楽しませてくれた。一番SFっぽい内容だったのではないか。まさに異次元の展開。読書冥利につきるというか、いやはや、劉 慈欣さんには足を向けて寝られない。

古典

今年は古典をあまり読んでいなかったが、『ドン・キホーテ』の前篇を読めたのは大きい。そしてちゃんと楽しめた。これほど古い本なのに、この時代に読んでも笑えるというのは、これは純粋に凄いことだと思う。人間というのは本質的にはあまり変わっていないということなのかもしれない。サンチョのツッコミ、そして大活躍する脇役陣。ドン・キホーテを主軸としながらも、作中作の出来も素晴らしく、短編集のようでもある。

古典に属するかわからないがオーウェルのエッセイもいくつか読んだ。『パリ・ロンドン放浪記』『一杯のおいしい紅茶』『あなたと原爆』と、どれも素晴らしかった。オーウェルについては来年あたり『1984』を久しぶりに再読したい。

また日本の古典では、方丈記徒然草の現代語訳を読んだが、どちらも想像とまったく違う内容で(というか前知識が単純にまったくなかった)、驚くほど楽しく読めた。古くさい表現だが、ほぼそのまま「現代にも通用する」内容だ。やはり、人間はあまり変わっていないということだろう。この場合は人間が作る「社会」か。

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歴史小説

2021年は司馬遼太郎の『竜馬がゆく』から始まっていた。昨年から読み始めていたのもで、最後の2冊を今年の1月に読み終えた。その後、今年の冬に関東地方に訪れるタイミングで読んだのが『燃えよ剣』。文庫で2冊と竜馬シリーズと比べるとボリュームに欠けるが、新撰組の活動をざっと追うことができてよかった。年始と年末を司馬遼太郎でサンドイッチした形になった。そしてやはり、京都に行きたくなった。

人文・社会科学・歴史

ノンフィクション系では、去年頃から気になっている気候変動の問題や、今後の資本主義(またはそれを置き換える何か)をテーマに読み始めている。何よりも印象に残っているのは斎藤幸平『人新世の資本論』。ふと本屋で見かけた本で、装丁が嫌いなタイプだったので迷ったが、読んでみて正解だった。ここから参考書籍を拾う形で『ドーナツ経済学』『地球が燃えている』などに手を出した。ほかにも個人的には今年一番の鈍器本だった『暴力と不平等の人類史』や、『反穀物の人類史』に衝撃を受けた。

少しテーマが変わるが、ちくま文庫の『裸はいつから恥ずかしくなったか』も衝撃的だった。まさに天地がひっくり返るというか、希有な体験だった。常識を疑うきっかけとなる一冊だが、羞恥心という人間の感情すらいかに作られることがあるのか。常識、思い込みを疑うという意味では、『反穀物の人類史』にも通じるテーマだ。

充実の2021年でした

ほかにも、寅さん・渥美清関連の本も何冊も読んだし、振り返ってみればなんだかんだで充実とした一年だった。

しかしだ。60冊読んだところで、恐らく今年だけでも60冊以上は購入しているはずだし、今後も「購入した本」>「読了した本」という関係性は続くだろう。少し積むペースを抑えないといけないと、少し反省しつつも、また年を越せば「景気よくぱーっと行っちゃおう」と積んでしまう(散財しちゃう)んだろうな。。

今年も本屋さんや古本屋さんには本当にお世話になりました。

来年もどうぞよろしくお願いいたします。