ハト場日記

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【関東旅】東京は葛飾の柴又よ

男はつらいよ』巡礼の旅、というわけでもないが、しばらく東京に行く用事があったので、いつか行ってみようと思っていた葛飾区柴又に行ってきた。

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柴又というと映画でもよく映される柴又駅なのだが、よく考えると寅さんはいつも江戸川を歩いて家に向かっている。これは、佐藤利明『みんなの寅さん』を読んでいて気付かされたのだが、寅さんは普段、北にある金町駅から江戸川を歩いて帰ってきている。

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たしかに、寅さんは遠隔地から戻ってくることがほとんどなので、その場合はJR(当時の国鉄)の駅に到着するのが自然ではある。また、柴又駅だと、とらや/くるまやまで徒歩ですぐに着いてしまうが、金町駅からなら江戸川沿いを歩いて2km程度の道となり、故郷の風景や人々を眺め、しみじみと帰郷の喜びを感じられるルートになる(実際は必ずいろいろと騒動を起こすわけだが)。

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映画でも時折サイクリングする人が映っていたと記憶しているが、現在はとても気持ちのよいサイクリング道路になっていた。平日の午前中だったためか、主に年配の方がたがゆったりと散歩を楽しんでおられた。

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江戸川沿いを歩いた先で、まず「葛飾柴又 寅さん記念館」に寄った。

www.katsushika-kanko.com

実際に撮影で使われていたとらや/くるまやのセットを見学できた。とらやの中を自由に歩いて見て回れる、『男はつらいよ』ファンにとってはたまらない場所。

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おばちゃんやさくらがよく立っていた台所のあたりや、寅さんがアリアを披露する茶の間。寅さんが帰ってからすぐ向かう階段の奥。どれも馴染みの風景で、初めての場所とはいえ、妙にほっと落ち着く空間。一視聴者にとっても、そこは「故郷」のように思えた。

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少し戻り、記念館入口を入ってすぐ左側にはちょっとした映像コーナーがあり、『男はつらいよ』シリーズ以前の寅次郎のストーリーが簡単に紹介されていた。戦争の暗い影。そう、寅次郎は東京大空襲も経験していた。

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とらやの奥に進むと朝日印刷所のコーナーがある。とらやとは異なり、残念ながら当時を再現したものではないが、当時の印刷技術について学べて面白かった。その後、当時の葛飾ジオラマや、鉄道関連の展示物、『男はつらいよ』の名シーンを紹介する映像コーナーなど、非常に満足のできる展示内容だった。特に最後にあった「寅の全財産」という、寅さんのトランクの中身を紹介するところは面白い。

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併設されている「山田洋次ミュージアム」も寄った。『男はつらいよ』以外あまり山田作品を観ていないのだが、山田作品のファンならきっと楽しめる。比較的小さな展示室で、やはりメインは寅さんミュージアムのようだ。

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次は帝釈天へ。映画で何度も映された入口の門。鐘。入口を前にして左を眺めると、そこからさくらが自転車で「源ちゃん、おはよう」と入ってきそうだ。映画の思い入れがなくても素晴らしいお寺。

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「寅さんおみくじ」「寅さんお守り」なるものは販売されていたが、それほど前面に出しているわけではく、はしたなくもない。帝釈天はあくまで帝釈天だった。とても気持ちよく参拝できた。

その後は参道の商店街を進み、「とらや」(最初の数作品での撮影場所)で簡単な昼食をいただき、「高木屋」(柴又ロケ中の楽屋)でお団子をいただいた。どちらも『男はつらいよ』には馴染みの場所で、当時の写真などが飾られていて面白い。なによりも、サービスがとても気持ちがよい。どちらも、「下町にありそうな」落ち着けるお店だった。

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ほかにもおせんべい屋さん、団子屋さん、お土産屋さんなど。飴屋さんで「セキトメ飴」なるたんきり飴が売っていたので購入。同じようなものを、呼子だったか、どこかの商店街で買った記憶がある。たしか、それも九州ではなく、どこか遠くから売りにきているということだったと思う。ひょっとしたらあれも柴又のものだったかもしれない。

帰りは、寅さんがするように、柴又駅から。柴又駅は当時のまま、というわけではないが、おおきな改築もなく、映画のシーンを思い出すのも難しくはない。

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一度は行ってみたいと思い来てみたが、思ったよりも気持ちよく過ごせた。おだんごを食べて、帝釈天を参拝するだけでも来る価値はあろう。今度は夫婦で訪れたい。