ハト場日記

Working, Reading, and Wondering

池上英洋『よみがえる天才2 レオナルド・ダ・ヴィンチ』と旅の思い出

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レオナルド・ダヴィンチの生涯と作品をざっと紹介する入門書。

芸術だけでなく発明家としても知られる、万能型の天才。実はかなりの努力家。そして未完成品ばかり生み出していたため、実際に完成品として残っているものが少ない。ヨーロッパに行くと、ミケランジェロの作品はゴロゴロと見つかるが、ダヴィンチは確かにあまり見た記憶がない。手帳やメモの類いはよく見た気はするのだが。

以前イタリアに旅行したとき、周囲で聞こえるイタリア語では、ダヴィンチのことをみな「レオナールド」と呼んでいて、なんだか愛着あふれる呼び方に感動していたのだが、どうやらダヴィンチというのは地名由来のもので、本人の名前と呼べるのは「レオナルド」の部分とか。つまり、「ダヴィンチ村のレオナルド」ということのようだ。これからは積極的にレオナルドと呼んでいきたい。

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サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会(2012年6月)

最後の晩餐は8年前に見に行ったことがあった。事前予約が必要で、時間も15分くらいしか見れなかったが、予想よりも規模が大きく驚いた。芸術作品の細かいところはよくわからないのだが、やはり大きな作品にはいつも驚かされる。レオナルド・ダヴィンチの名声を確定させた作品というのもうなずける。

当時はすでに修復された状態ではあったが、それでもまだ損傷具合ははっきりと出ていた。ただ、本書にもあるが、レオナルドが採用した技法が誤っていただけでなく(彼は時間をかけて取り組むスタイルのため、こうした壁画は基本的に向いていなかったようだ)、その後も隣室である厨房の影響、侵略軍、爆撃など、今残っているだけでも奇跡とも言える作品ではある。なんとか未来の世代にも残してほしいものだ。

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最後の晩餐のパネル展示(2012年6月)

本書ではミケランジェロとのライバル関係についても少し触れられていた。順位的にはレオナルド・ダヴィンチ→ミケランジェロラファエロという印象だったが、それはあくまで年齢の話で、当時は収入面や作品数、知名度など、ミケランジェロの方が上だったとか。本書では当時の収入も現代の日本円に換算されておりわかりやすかったが、大規模なプロジェクトにもなると、ミケランジェロクラスでは億レベルで受注していたと。現代的な感覚ではそれでも少ない気もするが、さすがと驚いた。

レオナルドも芸術だけに集中して取り組んでいればとも思うのだが、そこは万能人のつらいところなのか。興味があっちこっち行ってしまい、なかなか作品を完成させることも少なかったという。なんだか現代にも通じそうな話でもある。

比較的若い読者層を対象に書かれている本作(図書館でもYAに分類されていた)。それほど芸術に詳しくなくても読みやすいので、レオナルド・ダ・ヴィンチの概要をざっと追うには最適な入門書だと思う。口絵に作品がカラーで収録されているが、さすがにサイズが小さいため、高解像度の画像ファイルをネットを参照しながら読むのがおすすめ。