ハト場日記

Working, Reading, and Wondering

『『男はつらいよ』の幸福論』名越 康文

またまた飽きもせず、寅さんネタの本。

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今回は精神科医による著作ということで、若干異色。名場面を振り返りながら、精神科医が車寅次郎やほかの登場人物の深層心理を探る。

寅さんはなぜあそこまで女性に対して及び腰なのか。彼は草食男子の走りだったのか?という話から、マドンナの生き方、無口な父親像、プロポーズを恐れる男性陣、そして故郷と旅という本質的なテーマまで多様。精神科医が・・・というところで少し構えてしまうが、平易な内容で、専門用語もほぼ使われていない。もう少し難しい内容を期待していたのだが、どちらかというと寅さんテーマのエッセイといったところで、これはこれで楽しい。

あれだけ続いたシリーズとはいえ、あくまでコメディ映画。深読みにどれほどの意味があるか疑問ではありつつも、それでもいろいろ広げたい、もっと考えたい、語りたい!というのがファン心理というもの。本書も一ファンとして十分楽しめた。ああ、なるほど・・・と思うところから、それは考えすぎでしょ・・・というところまで、リアル人脈(そもそもそれがほぼないのが問題だが)の中では寅さんの話をつっこんでできる人がいないので、ただただ楽しい時間だった。