ハト場日記

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『みんなの寅さん from 1969』佐藤利明|「男はつらいよ」2周目完走

コロナ禍に入ってから見始めた「男はつらいよ」シリーズ。すっかりファンになってしまい、先日とうとう2周目を完走。自分のことながら、合計50作もある映画をこの短期間で2周も見てしまうんだから、少しあきれつつも、3周目はいつ始めようかと、まだまだまったく飽きはない。本当に不思議なシリーズである。

思えば1周目は、Wikipediaを見ながら出演者や撮影地、こぼれ話を確認しながら見ていた。さすがファンが多いシリーズだけあって、Wikipediaも相当のボリューム。かなりの作品数にもかかわらず、作品ごとの解説も相当細かい。

ja.wikipedia.org

2周目のお供となったのは、佐藤利明氏の『みんなの寅さん from 1969』という鈍器本。

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ラジオ番組が元のようだが、各作品を取り上げたエッセイ集のようなもので、それ以外にも渥美清の生涯についてもまとめられていたり、撮影地や出演者などのデータベースも巻末に収録されていたりと、まさに決定版。この種の本はほかにもあるようで、これから少しずつ拾っていくのが楽しみだが、古書以外で普通に本屋で買えるのは本書くらいじゃないかと思う。コロナ禍に入り在宅時間が増えた今(特に最近は動画配信サービスでも扱いが広がっていることもあり)、自分のようにガチではまってしまった人ならぜひ手元に置いておきたい一冊。

先日「寅さんの何がそんなにいいんだ?」と聞かれて回答に困ったことがあった。自分でもよくわからない。「男はつらいよ」はロードムービーでもあり、ファミリームービーでもあり、また昭和・平成の日本の風景が残されている記録映画でもある。なにより渥美清の語りの素晴らしさが光るコメディ映画でもある。ときに、これは倍賞千恵子の作品じゃないだろうかと思うくらい、さくらの役が輝くところもある。寅さんが帰ってきたときに「お兄ちゃん!」といつも本当にうれしそうに喜ぶ姿。あの関係性というのは、あれだけ続いたシリーズだからこそ生まれてくるものだと思う。2周目では倍賞千恵子の何気ない演技になんど唸ったことか。博役の前田吟の芝居くさい芝居も、これはこれでいい。2周目に入って、これぞ博だと思えてきた。おばちゃんの安定した存在感。3代目まで続いたおいちゃんも、それぞれに個性があって楽しい。満夫が前面に出てきた最後の数作はやはりスピンオフ感が拭えないものの、2周目ともなると、これはこれでいいんじゃないかと思えてきた。

さて、3周目はいつ始めようか。英語には「comfort show」といった表現がある。疲れたとき、落ち込んだとき、どん底のときに正気を保たせてくれる、何度繰り返し見ても笑えたりほっとできる、実家のような存在の作品のこと。個人的には海外ドラマの「フレンズ」や「オフィス」。日本語ならダウンタウンの昔のガキの使いやコントがそういう存在だったのだが、それに最近加わったのがこの「男はつらいよ」シリーズ。安心して繰り返し見ることができる作品が増えたのは単純にうれしいし、心強い。

さあ、3周目はいつ始めようか。