ハト場日記

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韓国ドラマ『地獄が呼んでいる』|アブラハムよ、イサクを守るのだ!

最近妙に韓国ドラマを押しているNetflixで今人気ナンバーワンという『地獄が呼んでいる』。ちょっと観てみるかと最初のエピソードを始めたら止まらなくなって、一気見。おかげでかなり寝不足気味。

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俳優陣はユ・アイン、キム・ヒョンジュなど。個人的には『息もできない』で大ファンになったヤン・イクチュンが出ていたうれしかった。『梨泰院クラス』の役者さんもいい演技だった。

先日観た『イカゲーム』もよかったが、こちらの『地獄が呼んでいる』のほうが個人的には好き。今回も「VIP役」というのが少し出てくるが、そこが非常に残念だった『イカゲーム』とは違ってこちらは安心して観ることができた。今回は外国のVIPということでもなかったが、いずれにしてもしゃべらせないのがやはり正解。

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ウェブ向けの漫画が原作とのことで、今の時代を非常にうまく投影した作品だと感じた。ネット社会のこういった側面はすでにあるある感が否めないが、特にトランプ以降、扇動家、狂信者、便乗者の暗躍というのは大きな問題で、今後さらに闇は深まるような気がしていて、その辺をうまく描き出していたように思う。ディストピアなんだけども、もうこの時代は来ているような気すらしてくる。

そういえば先日はJFKの命日だったが、ケネディが暗殺されたダラスの現場にQアノンの支持者が集まり、父親と同じように若くして不運な最期を遂げたJFKジュニアの復活を待っていたという、嘘みたいなニュースもあった(死から復活したJFKジュニアがトランプの後を継ぐという話だそうだ)。本作に出てくる「矢じり」という集団より、実際に存在するQアノンのほうがいかれているのではないかという、笑えない現実。

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日本のコンテンツなら、『デスノート』の要素に『20世紀少年』の雰囲気を足したような感じとも言えなくもない。しかし、さすが韓国というか、カルト教団を描かせたらやはり韓国はうまい。ユ・アインさんの作品をほかに観た記憶がないのだが、間違いなくぴったりの演技だった。『20世紀少年』で言うと、同じく浦沢直樹の『モンスター』に出てくるヨハンも彷彿させる。ひょっとすると実際に参考にされていのかもしれない。『モンスター』や『20世紀少年』を韓国の制作陣が映像化したらどうなるのだろうか。是非観てみたい。

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さて、結局のところ、人々を地獄に連れ去っていた巨人は何だったのか。神の使者なのか。あるいは悪魔の一味なのか。そのへんの解釈は視聴者に与えられているようだが、おそらくキリスト教的な神のわざだったのだろうと思う。最後にあの巨人たちが倒されたように見えたが、おそらくあの両親が見せた無償の愛、これを本作の神さまが見たかったのだろう。聖書にもアブラハムが神に命じられて息子を捧げようとした逸話があるが、本作ではそれを反転させ、神の意志に反抗して子供を守ろうとした両親の願いが届いたような形になっている。その点で、初代の議長は失敗したのだ。彼は正しいことの「源泉」を見誤り、与えられた20年を無駄に過ごした。そして2人の子供を残してさらし者にされた女性も「大人の判断」で失敗した。最後の最後に赤ん坊の犠牲者が出そうになるまで人間は変わらなかった。「愛がすべて」なのだが、そうは生きない、動かない私たち。アブラハムの逸話の反転といい、キリスト教に対する新しい解釈、あるいは反抗、いや既存のキリスト教を利用するカルト卿に対する苛立ちがあるのだろう。

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ゴーリキー『どん底』|に・ん・げ・ん。って素晴らしい!のか?

ロシアの作家、ゴーリキーによる戯曲。先日仕事で最悪なフィードバックをもらって以来落ち込んでいる私ですが、「仕事で大失敗したときにおすすめ」といった感じでどこかのブログで紹介されていて手に取った作品。蓋を開けると(ページをめくると?)、仕事の失敗というより、真実とは何か、人間とは何か、苦しみ、希望とは何かなど、かなり大きなテーマを扱った内容。

最近日本で上演されたようで、それに合わせて出た新訳とか。いつか実際に見に行きたいものです。調べると、黒澤明ゴーリキーを基にした映画『どん底』を作っているようなので、まずはそれを観てみよう。

以下は印象的だった部分。

おめえはどこ行ったって余計者だ・・・・・・そうだろ、この世に生きてる人間はみーんな余計者さ・・・・・・(P47)

だけど・・・・・・もう少し生きてたいの・・・・・・生きられたらなあ・・・・・・もう少しだけ!・・・・・・あの世に苦しみがないんだったら・・・・・・この世でもうちょっとだけ我慢できるわ・・・・・・我慢できる!(P66)

誰もみな苦しんでいる。それぞれの苦しみを。死んだ先に安らぎが待っているなら、アンナの言うとおり、もう少し我慢できるはずだ。

信じるなら神は存在する。信じなければ存在しない・・・・・・何だって信じていれば存在するんだ・・・・・・(P72)

ルカじいさんのセリフだが、自分も似たようなことを以前口にした記憶があって、そのときはなんだか馬鹿にされたような思い出が。

もしかすると、ワーシャ、あたしが愛してたのはあんたじゃなくて、あんたの中に見つけた、あたしの希望、自由になれるっていう考えだったのかもしれない・・・・・・(P76)

人間は誰だって、生まれて、生きて、死んでいくのさ。おれも死ぬし、おめえも死ぬ・・・・・・かわいそうがることなんてないさ!(P87)

「おれは働いてる人間だ」って。まるで、みんな、あいつより下だと言わんばかりに・・・・・・好きなら働くがいいさ・・・・・・だけど、それを自慢することもなかろう?人間の値打ちが働きぶりで決まるんなら・・・・・・馬にかなう人間なんてどこにもいねえよ(P104)

Anti-Work界隈で好まれそうなセリフ。

おれよりもたくさん盗みをしても尊敬されて暮らしてる連中がいるんだから、と自分を慰めたりする・・・・・・でも、そんなのは何の救いにもならねえ!そうじゃないんだ!おれ、別に後悔はしていねえ・・・・・・良心なんてものも信じねえ・・・・・・だけどな、ひとつだけ感じるんだ、今とは違ったふうに・・・・・・生きなきゃいけねえって!もっとまっとうな生活をしなきゃいけねえんだ!自分で自分を尊敬できるような・・・・・・そんな生き方をしなきゃいけねえんだ(P109)

わかる。すごくわかる。

あのじいさんは、真実ってもんが嫌いだった・・・・・・ひどく真実ってやつに対抗していた・・・・・・そりゃ当然さ!そうだよ、ひどい真実じゃないか?そんなもんあったところで・・・・・・息がつけねえんだ・・・・・・公爵どんにしたって、仕事をしていて手を潰されちまった・・・・・・手をばっさり切断せにゃならんそうだ。いいか・・・・・・これが真実ってもんなんだ!(P139)

親しい人に対する思いやりから嘘をつく人間もたくさんいるって、おれは知ってるんだ!本で読んだんだ!そういう人たちはじつに美しく、魂を込めて、精神を高揚させながら嘘をつくんだ!人の心を慰める嘘もあるし、仲直りさせてくれる嘘もある・・・・・・労働者の手を押し潰す重労働を正当化する嘘もあれば・・・・・・飢え死にする人たちを悪者にしちまう嘘もある・・・・・・おれは嘘ってものを知っている!心が弱いやつ・・・・・・他人の甘い汁を吸って生きてるやつにゃ、嘘は必需品だ・・・・・・嘘に頼って生きるやつもいれば、嘘を隠れ蓑にするやつもいるからな・・・・・・だけど、完全に自立した人間・・・・・・独立した、他人を食い物にしない人間には嘘なんて、まったくいらねえ!・・・・・・嘘は奴隷と主人の宗教だが・・・・・・真実こそが、自由な人間の神さまなんだ!(P140)

嘘というものの多面性。しかし、そこから完全に自由になったとき、そこに真実はあるのだろうか。嘘まみれの中に生きている自分にはまったく現実味がわいてこない。まさに、嘘を隠れ蓑にして生きているようなもんだから。

おまえさんたち、生きとし生けるものはみんな、より良きもののために生きているんだ!だから、どんな人間も尊敬してやらないといけない・・・・・・その人がどういう人間なのか、何のために生まれてきて、何ができるのか、おれたちにはわからないんだからな・・・・・・もしかしたら、おれたちを幸せにするために・・・・・・おれたちに大いに役に立つために生まれてきたのかもしれないんだ・・・・・・とくに子供たちは大切にしなきゃな・・・・・・小さな子供たちはな!子供たちには果てしなく拡がる大地みてえな自由が必要なんだ!子供たちが生きるのを邪魔しちゃいけない・・・・・・子供たちは尊敬してやらなきゃ!(P142)

そしてここに人間に対する絶対的な尊敬が生まれる!これを信じることができれば!

人間は信じることもできれば、信じないでいることもできる・・・・・・それはその人間の勝手だ!人間は自由なんだ・・・・・・人間はどんなことでも自分の裁量で選ぶんだ。神を信じるか、信じないかも、恋愛や思想に関しても、人間はすべてを自分で選び取り、自分でその代償を支払うんだ。だから、人間は自由だ!・・・・・・人間、これこそが真実だ!人間っていったい何なんだろう?・・・・・・それはおめえでもないし、おれでもないし、やつらでもない・・・・・・そうじゃないんだ!それは、おめえも、おれも、やつらも、あのじいさんも、ナポレオンも、マホメットも・・・・・・みーんな一緒にしたものだ!(空中に指で人間の姿を描く)わかるか?それは、途方もなく大きなものなんだ!そのなかにすべての始まりと終わりがある・・・・・・すべてが人間のなかにあるし、すべてが人間のためにある!存在するのは人間だけなんだ、それ以外のものはすべて、人間の腕と脳みそ次第なんだ!にんげん!それはーーーじつに素晴らしい!何と誇り高い響きがするんだろう!に・ん・げ・ん!人間は尊敬しなきゃいけない!・・・・・・哀れむのでもなく・・・・・・同情して蔑むのでもなく・・・・・・尊敬しなきゃいけないんだ!人間に乾杯しよう、男爵!(P149)

すべての始まりと終わりがある、総体となるものが人間。いやそれが世界そのもの?ひょっとすると、それが神と呼べるのかもしれない。

岩波の古い訳も読んでみたい気がしてきた。

エラ・バーサド/スーザン・エルダキン『文学効能事典』

仕事で大失敗して、この暗く落ち込んだ精神を救うべくすがるように手に取った本書。

心身の様々な病、悩みに効能が期待される書物を紹介した本書。ほぼ海外の小説を扱っており、未翻訳のものも多いため、原書よりも取り扱っている書籍数が大きく減っているが、それでも202冊が取り上げられている。気になるものはAmazonウィッシュリストにどんどん追加していったが、掲載されている本の中にも絶版のものもあるのが残念。絶版で中古価格が悪くないものはそうそうに注文を入れた。書店にいって実際に確認したい本も増えたので、しばらくは書店に行っても忙しくなりそうだ。

残念ながら、「仕事に失敗したとき」という項目は掲載されていなかったが、それに類する項目、また自分でも気付いていなかった悩みに効く本など、思いのほか多く拾えた。種類的にも古典文学から現代小説、ヤングアダルトなど幅広く取り上げられているので、普段レーダーに入ってこないような本についても知ることができた。

当然、ある種のネタ本というか、実際にそれぞれの病や悩みに効くかどうかは怪しいものだが、その視点は比較的面白く、実際に積ん読が増えそうなので、(少なくとも自分にとっては)説得力があったのだろう。

 

韓国ドラマ『イカゲーム』

巷で噂の『イカゲーム』。全9話と比較的短いシリーズだったこともあり、3日ほどで一気見。

通常はドラマではあまり見かけないイ・ジョンジェが主演。ほかは、後半に出てくるあの人をのぞいては、ビックネームはいなかったが、みなよい演技だったと思う。パキスタン人役の俳優さんや、脱北者の女性役の方など、印象的な役者さんもいた。

残念だったのはVIP役。声だけからしかわからないが、なんだか素人のような演技。あまりにリアリティに欠けた演技。ぼんやりとしか聞き取れない韓国語より、慣れている英語の方が「下手さ」が目立つのだろうか。それとも、コロナの影響で、海外からちゃんとした俳優を呼び寄せることができなかったのだろうか。だとしても、あれはひどかった。

全体を通して楽しめたのは間違いないが、噂になるほどの作品でもなかったかなというのが本音のところ。期待が高すぎたかもしれない。

とはいえ、現代社会の暗部をうまく描き出していたとは思う。平等とは。寛容とは。善悪とは。強者・弱者とは。搾取とは。犠牲とは。さまざまな側面で考察できる「文学的な」一面もある。ただ、黒幕(これは想像できた人も多かったはず)の説明がどうも情けなく聞こえた。「ゲーム」は世界的な大会のような描写だったので、黒幕はあくまで韓国大会の黒幕にすぎないのか。シーズン2に続きそうなエンディングだったことから、今後より明らかになるのか。まだ拾われていない伏線もあったのではないか(アップロードはどうなった?など)。すべてのクリエイティブな判断には必ず理由があるとどこかで聞いたが、あの髪の色は何を意味していたのだろうか。

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チョン・セラン『フィフティ・ピープル』

ふと、この世界には人が多すぎる、と思うことがある。外を少し歩いてみるだけで、何人、何十人、場所によっては何百人の人を見かける。自分の人生、生活だけを考えるのにも精一杯なのに、この人たちにも一人ひとり、同じ大きさの世界、生活があると思うとめまいすら感じてしまう。

本作を読んだことで、今まで見えていたこういった人々の映像、印象が少し変わった気がする。タイトル通り、50人の人々(あとがきによると実際は書きすぎて、51人だそうだ)の物語で構成される短編集であるが、それぞれの物語、登場人物、事件が交差し、一続きの長編として読める。こういう手法は恐らく新しいものではないのだろうが、個人的には初めて出会ったタイプだったので、面白く読めた(伊坂幸太郎が似たようなの書いていた気がするが、詳しく覚えてはいない)。

それぞれは数ページから、長くても十数ページ程度の短い物語で、なんてことのない話から、衝撃的な話までさまざま。「ん、この話前に聞いたな?」ということが各所にちりばめられており、前のページをパラパラと戻って確認したりと、少し変わった読書体験となった。ひょっとすると再読を狙った効果なのかもしれない。

そして最後の章でほぼ全員が集合し、一冊の長編作品とまとまる。人間は社会的な生き物だ。必ずどこでほかの人々とつながり、暮らしている。

ひょっとすると、僕の何気ない一日の一幕が、ほかの誰かの生活に影響しているのかもしれない。自分が翻訳した文章を読んで何かを思い、行動を変えた人がいるかもしれない。あるいは、僕がふと人混みで発した言葉が、もっと大きな影響を与えたのかもしれない。通っているお店の店員さんと、気付いていないまったく別の関わりがあるのかもしれない。人間というのは社会なのだと強く感じさせられた。

たった51人の、その生活のほんの一部を切り取っただけなのに、これだけの広がり。登場人物が互いに絡み合う短編集なのだが、名前を追うのも大変だ。この世の中に住む人々が感じていること、喜び、悩み、痛み。これらをすべて集めたら、それはいったいどのようなものなのだろうか。そのほんの一部を実現したのが本作なのだろう。人間が作り出す世界の大きさ、これに驚くばかりだ。

最後の訳者あとがきには、本書の背景となった韓国内の事件などがまとめられている。こういった背景を頭に入れ、Wikipedeia等で調べてから再読すると、近年の韓国の状況がよりはっきりと見えてくるかもしれない。個人的にもシンクホールの事件などは知り合いの知り合いが被害に遭ったこともあり、まだ生々しく感じた。

そういえば最近『東京の生活史』という鈍器本が人気のようだが、あれは本作と同じ思想でノンフィクションにしたものなのだろうか。機会があれば今度読んでみたい。

映画『21世紀の資本』|(僕みたいに)書籍版に挫折したあなたに

トマ・ピケティ『21世紀の資本』を基にしたドキュメンタリー作品。トマ・ピケティ本人が監修、出演となっている。ほかにも、ポール・メイソン、スティグリッツフランシス・フクヤマなど、自分ですら名前を知っているような人も出ていた。

書籍の『21世紀の資本』を読み始めてはや数か月、途中1/3で止まってしまっており、読んだ部分の内容の頭から消えかかっていた。そういえば映画版があったことを思い出し、それを観ればもう一度最初から読みたいと思うのではと、まあ浅はかな考えで見始めた作品。

観てみると、内容はざっくりではあるがほぼ頭に入っていた内容。そういえば、『21世紀の資本』でも「はじめに」の章で全体の概説があったので、そこの内容を覚えていたのかもしれない。それに、そもそも『21世紀の資本』は他の書籍であまりにも引用されているから基礎知識として読もうと思ったという背景もあって、おそらく他の書籍で紹介されていた内容が繰り返し脳内に刻まれていたのだろう。

細かいデータはともかく、全体像は頭に入っていたということで、すぐには読み直さなくてもいいかもしれない!という結論に。このテーマで積んでいる本があまりにもあるので、またそのうち戻るかもしれないが。

ピケティの面白いところは、ポピュラーカルチャーを多く取り上げていることだろう。この映画でも多くの映画が取り上げられていて、これはたぶん映画視聴者に合わせての内容だろう。『エリジウム』という映画は、マット・デイモン主演なのに不思議なことにまったく知らなかったので、これは今度観ておこうと思う。

映画『ウォール街』のキャラクターが熱弁した「貪欲はよいものだ」(Greed is good)という言葉が儲け追求の免罪符となったという話があったが、日本でも「金儲けは悪いことか」「金儲けの何が悪い」と叫んでいた輩がいたなあと思い出した。自分の頭の中ではホリエモンだったが、Googleによると村上ファンドの社長の言葉だったようだ。個人的にも、あの時代から世の中の空気が少し変わった気がしていて、その空気感が現在まで続いているような印象はあったので、この辺の共通点が見えたのは面白かった。

21世紀の資本

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久しぶりの帰省

少し前後したが、先月末頃に、コロナ禍に入ってから初めて実家に帰省したときの日記が下書きに残っていた。

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妻は仕事だったので今回は本当に久しぶりに1人での帰省となった。

目的だったイベントに参加し、その後は基本的に食べて寝るの数日間。家族とも久しぶりにちゃんと話せたし、また遺産やら今後の話までできたので収穫はあった。

いろいろと引き出しを開けていたら、昔の写真やら手紙やら日記やらが出てきた。自分の日記というのが意外と面白くて、何だかいろいろと苦労しているのだが、覚えているよりも、よっぽどしっかりしているし、考えを書き記しているし、また感情も爆発していて驚いた。20歳前後、留学していた頃のもの。この日記を書いた頃から、自分は大人になって成長したのか、それともただつまらない人間になっただけなのか。おそらく、いや間違いなく後者だ。大人になるというのは、後退でしかないのかもしれない。