ハト場日記

Working, Reading, and Wondering

『「日本の伝統」の正体』藤井 青銅

二礼二拍一礼というのがどうも苦手である。

神社巡りは人並み以上に好きで、国内旅行に出かければまず神社を調べる。別に信心深いというわけではなく、あくまで歴史的背景に興味があって回るのだ。しかし(神社から見ればはた迷惑なのだろうが)せっかく訪れたのに基本的にお参りもしない。説明看板にはすべて目を通し、気になったところはスマホにメモしたりその場でWikiで調べたりと、熱心な観光客ではあるのだが、やはりそこに神さまなるものがいるとは思えず、熱心な参拝者を横目に最後にはそそくさと帰ってしまう。

そんな僕でもちゃんとお参りすることがあるのだが、慣れていないこともあり、いつも二礼二拍一礼だったか、二拍二礼一拍だったか、わからなくなってしまう。周りに人がいるにも関わらず(どちらかと言えば周りに人がいるときに限って)間違えてしまい、最後にパンっと手を打って「なんか変だな・・・」と思いながら終わることもある。今考えれば、交代で2-2-1になるということだけ覚えておけば、最後に静かにお礼して終わるのだろうから、自然と「二礼二拍一礼」になるのだが。

いつだったか、いいかげんちゃんとやり方を覚えておこうとGoogle先生に聞いてみたことがある。そのときにわかったのが、二礼二拍一礼というのは意外と最近決まったやり方であること。最近と言っても明治時代なので古いと言えば古いのだが、ほとんどの神社は二礼二拍一礼の歴史よりも古いだろうから、やはり新しい作法だろうと言える。特に一桁世紀からあるような有名な神社の神さまなんかは、「最近はみんな変わった方法で拝みに来るわい」とでも不思議に思っているのかもしれない。

日本の伝統とか、日本では昔からどーのこーのとか、よく耳にするが、「昔から」っていうのは具体的にいつからを言っているんだい?という素朴な疑問に答えているのが本書。特に、実は歴史が浅いというものが中心に紹介されている。

個人的に思い入れの深い二礼二拍一礼もあれば、初詣、七五三、恵方巻き、正座、喪服、漬物、民謡、武士道など、意外と(想像していたよりも)歴史の浅いものもあった。一方で、外国語が起源のことわざがあったり、また日本初という説もあるマトリョーシカの話など、興味深い内容も多い。

歴史系トリビア本と言ってしまえばそれまでだが、「伝統」「昔ながら」という言葉に少しだけ疑いの目を向け「騙されないよう」気をつけようという気にはさせてくれた。