ハト場日記

Working, Reading, and Wondering

『人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか』中川毅

気候変動と聞いて頭に浮かぶのは、環境破壊、二酸化炭素SDGs、グレタさん、などなど。巷でも騒がれている、現在の人間の活動による今後50~100年の地球温暖化の問題である。ほぼ手遅れに近いとされている近年にやっと世界的に盛り上がってきた、あれである。個人的にも、これはまずいのではないかと焦ってきたのはここ数年だから、当然人のことをとやかく言えない。

f:id:yushinlee:20220726235604j:image

そして、わかっているようでわかっていない、この気候変動と温暖化の問題。その辺を理解を深めようと手に取ったのが本書。十万年のデータから知見が得られるのなら、今後どうすればよいのか見えてくるだろう。だってタイトルにもそうかいてあるんだから。

蓋を開ければ、過去のことはざっくりとながらよくわかった。実際の研究者の話だから信頼性も高い(自身の研究の話が軸になっている)。長い地球の歴史の中で気候がどのように変わってきたのか。今が非常に特異な期間であることも、いろいろと学べた。しかし、肝心の「これから何が起こるのか」は結局わからなかった。地球規模の気候というのは本来予測つかないものである、というのが「これから何が起こるのか」の結論になっているとも言える。いや、それこそが気候による危機の本当の意味かもしれない。

人間の活動と温室効果ガスにより地球が温暖化しているのは(本書ではそれほど取り上げられていないが)ほぼ間違いないだろう。温暖化の責任が100パーセント人間の活動になかったとしても、ある程度の関係性が明らかな部分については見直すべきという立場は変わらない。しかし地球の気候が本来持つ振れ幅というのはもっと大きい。思えば自分が若い頃は、どちらかというと寒冷化の心配の方が大きかった。今私たちが過ごしている時代は「不自然に」長い間氷期ということらしい。そもそも安定期の期限切れが近かったのか。人間の活動による温暖化が寒冷化を引き留めているのか。あるいはそれがバタフライ効果のように、暴力的とも言える不安定期に入る引き金となるのか。

今年もそうだが、ここ数年、世界中の気候がおかしい。先日もイギリスで観測史上発の40度超えを記録している。日本でも○○年に1回の規模の災害が頻発している。「何かがおかしい」というのは、日本だけでなく、世界中で共通のようだ。

結局私たちはどうするべきなのか。望ましいのは安定期が続くこと。できることは何か。技術力を高めたり、農耕依存から脱却したりして、人類が種としての適応力を高めることぐらいか。

SDGsとか地球温暖化とか、あれ何だったんだろうね」と振り替える時代が来るのかもしれない。