『広い宇宙に地球人しか見当たらない75の理由』スティーヴン・ウェッブ
旅行中に見つけた思い入れのある本。この本に出会ったのは10年近く前。アメリカ旅行中に立ち寄った公立図書館で、本書の原書である『Where is Everybody?』を見かけた。面白そうだとメモし、日本に戻ったら読もうと思い、まあ当然忘れてしまっていた。そして昨年頃、その新版が出ていて(アメリカで見かけたのは旧版で50の理由が書いてある版。新版は75に増えている)、さらにその日本語訳も出ていたことを知って、すぐに取り寄せた。そしてさらに積ん読で熟成させること約1年、ふと宇宙の話を聞きたくなって、手に取った。
フェルミパラドックスがテーマの本書。フェルミの問いに対する答えが75つも収録されている。いわゆるLayman向けの、事前知識がいらないタイプの本ではあるが、75もの「解」が収録されているだけあって、その視点は多様で、やはりある程度の前知識がないと厳しい。個人的には半分もちゃんと理解できていない。
それにしてもだ。75も解があれば、一つくらい「これだ!」というものに出会うかと思いきや、どれもそこそこ納得できるのだが、決定打に欠けている(あるいは難解すぎて、何を言っているのかよくわからない)。著者もいちいち疑問を投げかけているので、その影響も受けている。全体を通して面白く読んだが、結局自分なりの答えもなんだかまだぼんやりして、消化不足な感じも残った。著者のバイアスに乗っかってしまっている可能性も大。
「こんなに広い宇宙に、知的生命体が人類だけなんて、考えられない」
たしか映画『コンタクト』のエンディングでもジョディ・フォスターが似たようなことを言っていた。実際には、私たちには宇宙の実際の広さを想像することすら難しい。天文学者ならどうかわからないが、僕みたいな素人宇宙ファン程度には想像すら難しい。つい先日もNASAの新しい宇宙顕微鏡が撮影した遙か彼方の銀河の画像がニュースを賑わせた。あの驚くほど美しい写真。夜空のほんの一部にも、ちゃんと目を凝らせばあれだけの世界が存在している。そして実際にはまだまだ見えていない部分もある。360度あれだけの星、銀河があると思うと、まさに「頭がパンクしちゃう」のだ。恐怖すら感じてしまう。
しかし著者は、本人の説となる75個目の解で、「本当にそうだろうか」と問う。想像すらできないほど広い宇宙に我々しかいないとは考えられない、というのは、確かに直感的ではあるが、本当にそうなのか、と。これは面白い問いではある。
じゃあ、読者としてはどう思ったのかというと、繰り返しになるが、結局わからなかった。とにかく宇宙というのは、生命というのは、知性というのは、よくわからん。読めば読むほどわからなくなる。実際に、人類としてもよくわかっていないようだ。それこそSF作家が描いてきた想像力溢れる物語からも多く刺激を受け、これだけの「解」「説」が集められていて、人類の想像力の素晴らしさを感じられるべきなのかもしれないが、読み終わって残ったのは、(フェルミパラドックスについて言えば)結局私たちには何にもわかっていないじゃないかという感覚。
でも、それはがっかりしたということではなく、それでいいんだという気がしている。こんな感想では元も子もないのだが、結局私たちからは(少なくとも私が生きている間プラスα数百~数千年?)知ることはできないだろうということ。だから気長に連絡を待とう。そして想像し続けよう。別に急ぐことでもないはずだ。たぶん。