『円』劉慈欣短篇集
三体シリーズですっかりファンになってしまった中国のSF作家、劉慈欣。本書は彼の短編集。
時系列の順番に並んでいるので、劉慈欣の作風の変化なども楽しめるのだろうが、どれももれなく面白く、やはりこの人は才能の人なんだろうと再認識した。
SFと一口に言っても、テーマは幅広い。鯨、環境問題、宇宙戦争、バタフライ効果、円周率、オリンピック、戦争、タイムトラベルなどなど。『三体』にも出てきた秦の始皇帝も短編として読めたのはうれしい。詩人の李白まで出ていて、さすが中華SF!と唸った。
個人的なお気に入りを挙げると「円」「月の光」「円円のシャボン玉「カオスの蝶」あたりだろうか。「月の光」に関しては、自分の妄想(くだらないと思えるこの世界の姿は、実は私たちが持ちうる最適解かもしれない)が物語という形になったような気がして、なんだかうれしかった。