ハト場日記

Working, Reading, and Wondering

映画『遙かなる山の呼び声』

監督山田洋次、主演倍賞千恵子高倉健。1980年制作。

民子三部作の最後とのことだが、リンクする作品としてはやはり『幸せの黄色いハンカチ』が最初に頭に浮かんだ。特に本作のエンディングを観ると、一瞬『幸せの黄色いハンカチ』の前日譚なのかと疑ってしまうほど。

高倉健もいいのだが、やはりこれは倍賞千恵子の映画。ハイライトは、エンディング前、ふと弱さを見せて高倉健が演じる田島にすがりつく一瞬。このシーンを撮りたいがために本作を作ったと思えるほど。『幸せの黄色いハンカチ』のエンディングで倍賞千恵子が腰を折って泣き崩れるシーンが非常に印象的だったが、それに値する。

前半でのハナ肇の役もなかなかのクズぶりだったが、田島との喧嘩で負けてから一気に舎弟気取りになって、最後はなんかいい人みたいになっていた。あの辺の変わりようは今観ると(当時観たとしてもそうだったかもしれないが)しっくりこない。女性に乱暴しようとするほどのクズなのだが、なんだかそれも「男だから」と、社会的に少し許容されていたのかもしれない。『男はつらいよ』ですら、「嫌よ嫌よも好きのうち」というのを日本的な美徳の一種として扱っていた節があった。時代は変わったということかもしれない。