ハト場日記

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映画『白昼堂々』渥美清・倍賞千恵子主演

男はつらいよ』でおなじみの渥美清倍賞千恵子が主演の映画。当初は『男はつらいよ』が始まってからその人気にあやかって作ったような作品だと思っていたが、実際は『男はつらいよ』が始まる前夜、1968年の作品で、時期的には『男はつらいよ』ドラマ版の開始とほぼ重なる。賢妹愚兄の前に、まさか掏摸グループのパートナーと夫婦の役を演じていたとは驚いた。考えてみれば、『男はつらいよ』で人気が出た後では、この2人を夫婦にはしないかもしれない。

倍賞千恵子の実際の出演時間は短く、スクリーンタイム的には渥美清藤岡琢也が主に活躍する。ジャケットにもクレジットにも倍賞千恵子が主演となっていることから、やはり彼女がすでに売れっ子だったろうことがうかがえる。いずれにしても、期待が低かったせいもあるが、今見ても十分楽しめた。『男はつらいよ』ファンの補正も当然かかってはいるから判断は甘い。

スリの手口の甘さなどは酷いものだが、まあコメディ要素だろう。全体を通して軽快な雰囲気が流れているが、背景には炭鉱での厳しい労働など暗い影も見え隠れしている。

最後のシーンがなんとも気持ちがよい。倍賞千恵子の刺青姿にも惚れ惚れするし、渥美清のあっけらかんとした笑顔もいい。これくらい気楽に生きられたらと、いつも思う。

同類の映画としては洋画になるが『オーシャンズ』シリーズを思い出す。あれも好きなシリーズで何度も見ているが、全体を流れる明るさがなんとも気持ちがいい。この映画にも共通することだが、悪いことをしているものの、必ず資本主義的「強者」をカモとしている。この映画では高度成長期に入った日本でぼろ儲けしている(といっても、それほどあくどい商売というわけでないが)百貨店。『オーシャンズ』シリーズではもっとわかりやすいカジノ。こういう設定であれば、私のような庶民でも罪悪感なく笑って楽しめる、というわけだ。

とはいえ、考えてみれば、それをやっているのも、巨大資本となる映画制作会社であって、まあ、なんというか、こういう映画っていうのは、回り回って庶民が自分たちを笑っているようなものなのかもしれない。

まあ、それでもいいじゃないか。