ハト場日記

Working, Reading, and Wondering

映画『ゼロ・ダーク・サーティ』

911以降のウサーマ・ビン・ラーディンの捜索と最終的な殺害までを追ったフィクション/ノンフィクション映画。政府から詳しい情報は得ていないが、当事者からの証言を基に製作されているようなので、基本的には事実ベースの映画とみてよさそうだ。

政府からは不正確だと指摘を受けているようだ。拷問から得られた情報の過大描写、オバマ政権の役割の過小評価(映画ではほぼ何もしていない)、そしてCIA全体ではなく、あたかも1人のエージェントの活躍によるものだという描写。冒頭にある拷問シーンなど、当然政府としては正確な情報とは認められないだろうし、オバマ政権も自分の役割を誇示したいはず。CIAのシステムのおかげではなく、個人プレーが功を奏したなどとも、まさか言うまい。批判的な指摘はいろんな意味で「当然」とも言える。とはいえ、やはり実際にどこまで事実ベースだったのかはわからないので、あくまで映画として観るにとどめるべきだろう。

主人公はCIAエージェントの女性。設定上は高校出てすぐ引き抜かれた20代の若者とのことなので、おそらくウィル・ハンティングのような優秀な人材なのだろう。この主人公の女性の存在は架空では?というレビューもあったが、imdb.comによると、実際にビン・ラーディンを殺害したSEALsの手記にも優秀なCIAエージェントの女性として描かれているので、年齢などはともかく、これも事実のようだ。

ほぼ10年がかりだったビン・ラーディンの捜索と殺害。日本では311の後だったこともあり、衝撃度はそれほどだった記憶もある。主人公のマヤがBadassで格好いいのだが、実際の人物はどんな人だったのだろうか。

しかし、なんともやりきれないのが、最後にビン・ラーディンを倒したとして、そこに達成感もない。それでテロがなくなるのか。平和な世界に近づくのか。時機を逸した報復に過ぎず、それ以上でもそれ以下でもなかった。米国のあり方をどこかで自己批判しようとする意識のようなものが、あまりにも空虚なエンディングに感じられた。