ハト場日記

Working, Reading, and Wondering

映画『遙かなる山の呼び声』

監督山田洋次、主演倍賞千恵子、高倉健。1980年制作。 民子三部作の最後とのことだが、リンクする作品としてはやはり『幸せの黄色いハンカチ』が最初に頭に浮かんだ。特に本作のエンディングを観ると、一瞬『幸せの黄色いハンカチ』の前日譚なのかと疑ってし…

『一汁一菜でよいという提案』土井善晴

「食べること」について考えることが多くなった。 きっかけは先日読んだ食欲に関する本。それからアナーキズムの本。自分が日々食べているもの・ことについて、自分なりに考えるきっかけになり、また食品業界に対する怒りもふつふつと沸いてきている。 そこ…

映画『殺人者』マ・ドンソク|サイコパスをどう考えればよいか

これは駄目だ。思い出すことができないよう、できれば見た記憶を消したい。そんな技術が生まれるのをただただ待つのみだが、見てしまったからには、今後何度も思い出すことになりそうだ。久しぶりに見たことを後悔する映画だった。映画作品としては成功と言…

映画『白昼堂々』渥美清・倍賞千恵子主演

『男はつらいよ』でおなじみの渥美清・倍賞千恵子が主演の映画。当初は『男はつらいよ』が始まってからその人気にあやかって作ったような作品だと思っていたが、実際は『男はつらいよ』が始まる前夜、1968年の作品で、時期的には『男はつらいよ』ドラマ版の…

『街道をゆく 6 沖縄・先島への道』司馬遼太郎

急遽沖縄に行くことになり、道中のお供に選んだ「街道をゆく」シリーズの沖縄編。こんなときはKindleが本当に手軽でよい。 本書の行き先となったのは沖縄本島と、先島と呼ばれる石垣島を中心とする離島エリア。沖縄の(主に厳しく苦しかった)歴史を思い出し…

映画『ムーンライト』

第89回アカデミー作品賞を受賞したアメリカ映画。フロリダ州マイアミの貧しい地域で育った少年シャロン。通称リトル。無口で内気な彼は、学校で"faggot"と嘲笑されていた。そんな彼を少年期、思春期、青年期の3つの時代に分けて描いたのが本作。時折見られる…

『戦場のコックたち』深緑 野分

戦場という日常の中で繰り広げられる探偵劇。推理小説ではあるが、まじめな戦争文学でもあった。心がほっとするエピソードも交えつつ、舞台となるのはあくまで戦場。死の影がじわりじわりとにじり寄る。物語が進むにつれ、戦争の影は濃くなっていく。安易な…

3回目のコロナワクチン接種の翌日以降

やっとパソコンを開ける程度まで復活した。 接種の日は腕の痛みだけだったが、その日の深夜には発熱。腕と体全体の痛みで寝たり起きたりの繰り返し。深夜の間に38度になってから、それ以降24時間ほどその状態が続いた。以下、備忘。 6時間:腕の痛み 12時間…

3回目のコロナワクチンを接種してきた

3回目のブースターショットを打ってきた。とりあえず予約だけ入れておいて、また直前頃に感染者数などの傾向を見て打つタイミングを調整しようと思っていたが、感染者数がまた上昇し始めていたこともあり、予定通り接種してきた。 前回は昼過ぎに打って、夜…

映画『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』

フリーランスのジャーナリストであったガレス・ジョーンズの実話をもとに描かれた伝記的スリラー映画。背景は世界恐慌下の1930年代。英国の元首相ロイド・ジョージの外交顧問を務めていたジョーンズだったが、財政難のためその役職を解かれた。地元に戻り快…

ビリー・ジョエルとマンションの清掃スタッフ

真向かいのマンションでは、週に数回、業者の方がロビーや廊下の部分を清掃している。団地のような外に開けている形なので、こちらのベランダからもよく見えてしまう。声もよく聞こえる距離だ。静かに作業されているときもあれば、仲間同士でわいわい楽しく…

ローベンハイマー / シンプソン『科学者たちが語る食欲』|動物から学ぶ健康的な食生活のヒント

なぜ私たちはつい食べ過ぎてしまうのか。この際限のない食欲はコントロールできるのか。食欲はそもそもコントロールすべきものなのか。食欲は信用するべきでないのか。 現代社会が抱える肥満という問題。その仕組みと解決策を動物から学んでしまおう、という…

ブレイディみかこ『THIS IS JAPAN :英国保育士が見た日本』

ここ数年よく書店で見るようになったブレイディみかこ。そのブレイディ氏による2016年の日本取材記。現在は文庫になっていて手に入りやすい。 長らくイギリスに住んでいたブレイディ氏が、久しぶりに日本に長期滞在し、その間の取材をまとめたのが本書。 取…

ユヴァル・ノア・ハラリ『サピエンス全史』

ああ、長かった。読み始めたのが確か去年の12月。3か月かかったことになる。夜寝る前にちびりちびりKindleで読み進めたが、これだけ時間がかかるとやはり、読んでは忘れ、の繰り返し。それでも読み終わってみれば、楽しい本だった。上下巻と大作ではあったが…

『カメラを止めるな!』|生まれ変わったら次は映画人になるぞ

そういえば観ていなかった『カメラを止めるな!』。2017年公開のインディーズ映画。何の前知識もなく見始めた。最初は「失敗か?」と思いきや、後半はとにかく大爆笑の連続。想定していたホラー映画じゃなかった。最高級のエンターテイメント/コメディ映画だ…

コロナワクチンの接種券(3回目)が届いた

コロナワクチンの3回目の接種券が今日届いた。自分の年齢でも、3回目のブースター接種は2回目から6か月後に前倒しされており、自分の場合は昨年の9月だったからほぼ予定通り届いたようだ。 さて、実は3回目をどうしようか迷っていた。今回の3回目も、何ヶ月…

ファン・ジョンウン『ディディの傘』|もし自分にも小説を書けたとしたら

韓国の小説家ファン・ジョンウンによる短編集。「d」「何も言う必要がない」の2作品収録。 「d」 とにかく悲しい話。時代背景はセウォウル号の事故が起きた頃。あの頃の韓国社会というのはなんとも表現できない暗い時代だった。若い命が不条理な形で多数奪わ…

森元斎『もう革命しかないもんね』|革命後の世界を実践しようぜ

「もう革命しかないのか」。心の中でそうつぶやくことが近年増えてきた。傍若無人に振る舞う上層の1パーセントを見たとき。残りの99パーセントの我々が、みっともない内輪のいざこざを起こして分断を深めている姿を見たとき。意味もわからずそうつぶやく。 …

小林 佳世子『最後通牒ゲームの謎』

「最後通牒ゲーム」という心理学の実験を軸に、人間の行動とその心理を探る、ゲーム理論・進化心理学・行動経済学の入門書。 先日読んだジョナサン・ハイトの『社会はなぜ左と右にわかれるのか』と同分野の本で、本書でも何度か言及があった。 yushinlee.hat…

Switch『ゼノブレイド2』本編とDLCクリア

いつからやっているかもう忘れてしまったが、Switchの『ゼノブレイド2』の本編とDLC『黄金の国イーラ』をクリア。プレイ時間は本編で100時間以上、DLCで20時間以上。マイページには合計で130時間以上となっていた。 ゲーマーでありながら、どちらかというと…

ジェフリー・ディーヴァー『エンプティー・チェア』|<リンカーン・ライム>シリーズ第三作

精神的にまた谷の期間が訪れた。何も考えたくないときには推理小説が一番。毎度のことながら松本清張を手に取りかけたが、この前リンカーン・ライムシリーズをいくつか買っていたことを思い出し、久しぶりのジェフリー・ディーヴァーを満喫した。 本作は<リ…

ジョナサン・ハイト『社会はなぜ左と右にわかれるのか』

世界的に社会の分断が著しい。右派と左派の断絶を日常的に感じるようになったのは、単に自分が年を食ったからなのか、それとも本当に社会の断絶は深まっているのか。どうやら後者のようだ。そしてこれは日本だけの話ではない。 こういった政治的な対立の激化…

ハインライン『夏への扉』

私たち人間が進むべき理想的な社会とは何か。そのヒントのようなアイデアはSF作品で見つかるのではないかと最近ふと思い、著名な作品を読んでみようと手に取った。 その一冊目が本書『夏への扉』。アメリカのSF作家ロバート・A・ハインラインの代表作のよう…

中野孝次『清貧の思想』|清貧なる「はみ出し者」の社会はいかなるものか

バブル崩壊のまっただ中とも言える1992年にベストセラーとなった『清貧の思想』。この本のことを知ったのは確かこの朝日新聞の記事だった。 www.asahi.com なるほど、これは読んでおいたほうが良さそうだと買い求め、しばらく積んでいた。 その後、まったく…

トマス・ピンチョン『ブリーディング・エッジ』

元不正会計調査の"シングル"マザー。21世紀に入ったばかりのニューヨーク。911を巡る陰謀。死体。家族。ロマンス。逃亡。歪みを見せ始める資本主義社会。まだまだ記憶に生々しい911を背景とする、陰謀系探偵小説。ただし、それほど謎解きもないし、単なる探…

韓国映画『マルモイ ことばあつめ』|祖国とは国語である

日帝の植民地下にあった朝鮮半島で、日本により名前を変えられ、言葉を奪われつつあった人々の闘いを描いた韓国映画。朝鮮語学会事件として知られる事件がベースになっている。 祖国とは国語である こう言ったのはルーマニア出身の思想家シオランだが、自分…

【関東旅】高麗神社参拝

12月の旅の話。 昨年に読んだ金達寿『日本の中の朝鮮文化(1)相模・武蔵・上野・房総ほか』にインスパイアされ、この本で紹介されていた高麗神社へ参拝してきた。 yushinlee.hatenablog.com 場所は埼玉県日高市。都内から中央線で八王子駅へ向かい、八高線…

デヴィッド・グレーバー『ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論』

グレーバーの名前を知ったのはいつ頃だろうか。彼が2020年に亡くなったときに驚いた記憶があるので、恐らくこの本が発売された頃か、あるいはもっと前の、オキュパイ運動の頃か。記事レベルでは何度か読んでいて気になり、絶版になる前にと気になる本を買い…

2021年に読んだ本を振り返る

2021年も残すところあと2日。今年もコロナのおかげで読書が捗った一年だったようで、読書メーターで2021年に読んだ本をまとめてみたら、今年は合計で60冊読んでいた。基本的に読む速度はそれほど速いほうでもないし、それに加えて、人文系の時間のかかる本や…

【関東旅】東京は葛飾の柴又よ

『男はつらいよ』巡礼の旅、というわけでもないが、しばらく東京に行く用事があったので、いつか行ってみようと思っていた葛飾区柴又に行ってきた。 柴又というと映画でもよく映される柴又駅なのだが、よく考えると寅さんはいつも江戸川を歩いて家に向かって…